岡本綺堂の読物集 第三弾、「近代異妖篇」(第一弾は「三浦老人昔話」、第二弾は「青蛙堂鬼談」)、発売の由。
青蛙堂で語られた、おどろおどろしい鬼談たち。その中には「青蛙堂鬼談」に記されたものだけではなく、他にも数多くの鬼談があった。
拾遺の意味でそれらを草する。 「鬼談」ではなく、「奇談」の域を出ないものも、あるが…。
拾遺の意味でそれらを草する。 「鬼談」ではなく、「奇談」の域を出ないものも、あるが…。
青蛙堂鬼談の続編としての性質を持った短篇集です。拾遺集と思って侮る無かれ。冒頭の「こま犬」から、気味の悪い話が続々と続きます。「異妖篇」のように複数の怪談を集め一話としたものもあり、全体を読むと、朧朧とした印象の強い作品です。
「水鬼」や「影を踏まれた女」・「河鹿」・「百物語」は、怪談としての迫力充分。「水鬼」と「影を踏まれた女」は、人の持つ恐怖という感情を、怪談とは別の視点から煽り立てる名作です。
少し気になるのが、「近代異妖篇」とした今回の作品群。底本は春陽堂から一九三二年五月に出版された「綺堂讀物集 三 近代異妖篇」とありますから、青蛙房の「岡本綺堂読物選集」とは、収録作品に差異があります。
「異妖篇」としているのは、選集の四巻・五巻。岡本綺堂自身「近代異妖篇」として正式に作品を編んだかは不明ですので、収録作品の差異について論ずるのも甚だ骨折り損。というわけで、当て推量はこの辺で…。
ともかく、以下の作品については今回出版された版では未収録となります。興味のある方は、青空文庫などでご一読を。これらを含め、拾遺として出版してもらえればそれはまた面白いのですが。
- 西瓜
- 鴛鴦鏡
- 白髪鬼
- 海亀
- 妖婆
以前と同じく、口絵 山本タカト、装丁デザイン ミルキィ・イソベ。口絵のタイトルは「影を踏まれた女」です。
相変わらず見応えのある口絵です。
中公文庫では、この「岡本綺堂読物集」は装画や装丁を含め楽しいシリーズです。まだ続くと良いのですが。