三浦老人昔話

三浦老人昔話 - 岡本綺堂読物集一 (中公文庫)

探偵物語として有名な、岡本綺堂「半七捕物帳」。その半七の友人である三浦老人に、半七捕物帳でお馴染みの新聞記者の若者(私)が昔話を聞くという形式を取り語られるのが、本作「三浦老人昔話」です。

この三浦老人昔話、全十二篇から成る短篇集なのですが、一冊にこの十二篇が収録された版はなかなかありませんでした。
今は青空文庫でも読むことができますが、矢張りこういったものは手に取りゆっくりと読みたいものです。

岡本綺堂というと怪奇小説やミステリーの側面がよく言われますが、本作はどちらかというと、人間の悲哀や理不尽さ、そこに見える儚さを描いたものが多いです。
例えば「刺青」という作品。 身体が元々弱い男が、ある事情により「死んでもいいから刺青を入れて欲しい」と懇願する話です。これは何度読んでも泣いてしまいます。

また、主軸となるこういった話の他にも、三浦老人の住む大久保周辺の情緒も描かれ、何とも言えず芳醇な風情。
淡々と、人間そのものを昔話として語る三浦老人にも惹かれます。

ちなみにこの版は、口絵が山本タカト、装丁デザインはミルキィ・イソベ。この方々のファンにもお勧めです。
口絵の「矢がすり」は、一件の価値有りです。

青空文庫でも本作は公開されていますので、興味のある方はこちらで読んでも良いかもしれませんね。

青空文庫:三浦老人昔話 

Sho Yanagihara

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