マルキ・ド・サドと言うと、代表作に「悪徳の栄え」があります。
澁澤龍彦が引き起こした、「悪徳の栄え事件」でも有名ですね。
まぁこの本の中身はとにかく堕落描写のオンパレードですので、覚悟ができている方はご一読を。
燃える子供の心臓を食ったり、性に耽ったり。物語も長編ですので、結構疲れます。
少し前に、これと対をなす本でもある、「美徳の不幸」をもらいました。
1970年代に、角川書店から発行されていた版ですね。
現在河出文庫から出ているお下劣な表紙と違い、レオノール・フィニーの可愛い表紙絵です。
「O嬢の物語」の挿絵も描いている、フィニー。この人についてはいつかまた別の機会に語りたいと思います。
さて、肝心の「美徳の不幸」本編ですが、「悪徳の栄え」の主人公であるジュリエットの妹であるジュスティーヌが、その宗教的な敬虔さと美徳とによってありとあらゆる不幸を一身に受けるという内容です。
まぁ、「悪徳の栄え」程激しい描写はありませんね。ある程度漫画も含めて陰惨な本を読んでいる方は温く感じるかもしれません。
この話でおもしろいのは、ジュスティーヌを貶める人々です。
無神論を語ったり、人間性そのものを否定したり。
フランスに革命の嵐が吹き荒れる中こういった小説を書いていたサド。
彼の哲学がむしろ近世で唱えられる思想に近い様に感じます。
最後に皮肉めいたフォローを入れる辺りも興味深いですね。
興味を持った方は是非ご一読を。
さらに興味を持った方は「悪徳の栄え」から「ソドム百二十日」まで一気にいってしまいましょう。