書籍版・松井冬子画集 「世界中の子と友達になれる」

2012-06-24

Books

松井冬子画集 世界中の子と友達になれる (エーテー・アートブック)

横浜美術館で開催されていた松井冬子 大規模個展「世界中の子と友達になれる」の書籍版画集。

以前にも公式カタログの販売はあったのですが、今回発売の版は公式展覧会図録の全内容や、補遺として松井冬子自身による収録作品の解説、展示会場の記録写真、映像作品に関する情報、成山画廊での「松井冬子大下図展」展示作品、未発表作品を含めた、愛蔵版としての豪華仕様です。

松井冬子の存在を知ったのはもう何年前になるのか。どこかのテレビで「幽霊画を描く日本画家」として紹介されていたのを見たのが初めてだったと思います。
その後に画集に収録されていた「浄相の持続」を見て衝撃を受けたのを良く覚えています。

剥き出しの臓腑。その子宮に宿る胎児。雌しべをさらけだす花々。挑発的な視線。その痛々しくも美しい光景に、女性という概念そのものをむりやり指で喉奥に押し込まれたような感覚でした。 

個展の中で、その「浄相の持続」からの連作である「九相図」の他の作品を眺めながら、はて、九相図を目にしたのはどこだったか、と。
平等院の博物館にあった九相図(確か小野小町だった思いますが…間違っていたらごめんなさい)でしょうか。遺体が醜く損壊していき、最終的に骨となり、消え去る、その無常感をよく表していて、その時は鳳凰堂よりもこちらを熱心に眺めていましたっけ。

松井冬子の九相図は、現時点では未完。残りをどの様に描くのか、楽しみです。

それにしても、来歴やテクストを読むにつけ、つくづく松井冬子という人は、自身を細かく腑分けし、明け透けにさらけ出していく人なのだなぁ、と。
個展をご覧になった方も、書籍に収録されているこういった種々の補遺を読むのをお勧めします。 

余談ですが、映像作品については横浜美術館のHP内で閲覧することが可能です。興味のある方はこちらもご覧になると宜しいかと。

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