佐藤賢一の「双頭の鷲」。
数年前に読んでも、未だにペラペラとページをめくって読み直してしまう作品です。
中世、それも100年戦争時のフランスと言うと、騎士道精神ばかりが前に出て戦をすれば負け続け、領土の殆どを失っている、落ち目の国でした。
後年、ジャンヌ・ダルクの功績が神格化され、まるで救世主の様に崇められていますが、本当の意味でのフランスの救世主は、本作の主人公、ベルトラン・デュ・ゲクランでしょうね。
シャルル5世の影に隠れて知名度はありませんが、当時イギリスに切り取られた領地の殆どを取り返し、実質的にフランス国内からイギリスを駆逐する事に成功したベルトランの功績は、フランス史上最高のものだと思います。
本作ではそのベルトランを中心として、魅力的な登場人物達と共に100年戦争初期の歴史が楽しめます。
時代考証も素晴らしく、当時のフランスが垣間見える秀作です。
個人的に好きな登場人物は、ベルトランの参謀となる従弟のエマヌエル・デュ・ゲクランですね。
破天荒なベルトランに気苦労しながらも、彼の良き支えとなり、理解者となる姿勢に思わず微笑ましくなります。
この本は、歴史以上に人間ドラマを重視していますので、読み物としてオススメです。
直木賞受賞というお墨付きもありますので、是非、ご一読を。