―暑い夏こそ、涼しい怪談を。陳腐な台詞ですが、言いたくもなるこんな季節。
小泉八雲ことラフカディオ・ハーンは、その透明で純粋な美しい、詩的な魂をふるって、日本古来より伝わる、埃をかぶって黒く汚れた陰惨な物語達に新しい命を吹き込みました。
その透明な感性は、今も息づき、脈打ち、時にこんな暑い季節の夜にするすると、衣擦れの音を立てながらそっと僕の懐に忍び込んできます。
このたび国書刊行会から出版された「怪談」は、挿絵をシュルレアリスムの巨匠ヤン・シュヴァンクマイエルが勤めました。
この挿絵は、どちらかと言えば日本古来からのどろりとしながらひしめき合う、おどろどおどろしい妖怪達が描かれています。
そのせいか、今回の「怪談」は美しく透明な八雲の詩的世界がどこかひしゃげ、その世界に奇想が飛び交う全く新しい印象を受けました。
好き嫌いがあるかもしれませんが、一見の価値あり。シュヴァンクマイエルのファンは、必読。
節電節電とうるさい夏の夜に、扇風機の風と共に読むのをオススメします。