牧神の午後

牧神の午後 (MFコミックス ダ・ヴィンチシリーズ)

伝説のバレエダンサー、ヴァーツラフ・ニジンスキーを描いた作品はほとんどありません。本人の手記を集成した、「ニジンスキーの手記」などの書籍はそこそこあるのですが。

10年以上前に山岸凉子が漫画化したものがありましたが、それが復刻されていたんですね。知りませんでした。
山岸凉子といえば、「アラベスク」や「舞姫(テレプシコーラ)」で素晴らしいバレエシーンを描いてくれましたが、 その彼女が描いたニジンスキーはどんなものか。それは現実の世界で生きざるを得なかった、翼を持った哀しい天才の人生でした。

ニジンスキーを僕が知ったのは社会に出てから。22、3歳の頃だったと思います。
何気なくネットで海外のバレエダンサー(当時はピナ・バウシュが気になってました…)の画像を閲覧している内に、ニジンスキーの写真に行き着きました。

その時の衝撃たるや。見たことのない美が、そこにありました。
本作「牧神の午後」でも「黄金色の」と称された立ち昇る何かに、しばらく圧倒されたのを今でもはっきりと覚えています。
思えば僕にとってニジンスキーとの出会いは、赤江瀑との出会いでもありました。あの時彼のシェヘラザードを見なければ、「ニジンスキーの手」にも行き着くことはなかったと思います。

話が逸れましたが、「牧神の午後」では崩壊していくニジンスキーの人生が足早に通り過ぎていきます。その点は物足りない所もあるのですが、やはりシェヘラザードやペトリューシュカ、牧神の午後のシーンは、山岸凉子以外には描くことの出来ない領域に達しています。
ニジンスキーの映像で現存しているものは今なお発見されていませんが(写真動画を作成した方がいらっしゃいましたね。この方が作成した動画はYoutubeなどで見ることができます。)、 この本に描かれる活き活きとしたニジンスキーは、映像を飛び越えて僕の前にニジンスキーを体現せしめました。

バレエを愛する方には是非読んで欲しい一冊。同時収録の「黒鳥 -ブラック・スワン-」と、エッセイマンガ「瀕死のバレエ発表会」もお勧めです。
山岸凉子の、バレエへの愛を感じますね。 

Sho Yanagihara

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